ハシグチカナデリヤが、今の閉塞だらけの世の中へ向けて。自由にライブを…音楽さえも楽しめない世の中へガツッともの申すべく、8月29日(日)にVeats Shibuyaを舞台に主催したのが、「カナデリンピック2021~ライブは不要不急じゃねぇんだよ!バーカ!アーホ!の祭り」になる。
 出演したのは、ハシグチカナデリヤを筆頭に、ダイナ四バンド・ザ・マスミサイル・CHERRY GIRLS PROJECT・サナダヒデト(trio)・にっぽんワチャチャの計6組。ここには、CHERRY GIRLS PROJECTのライブの模様を、お伝えしたい。

CHERRY GIRLS PROJECTの歌は、闇や病みさえも生きる力に変えていった。

 紫の衣装姿に身を包んだメンバーたち。この衣装を着ているということは、「心の声」を彼女たちは届けようということか。その意味を示すように、CHERRY GIRLS PROJECTは人の心の中に巣くう黒い心を愁うように「モンスター」を歌いだした。自分たちが心に巣くう闇を認め、その気持ちと手を繋ぎながら、闇や病みさえも生きる力に変えてゆく。だからこそ彼女たちは、制御不能な感情さえも隠すことなく、胸に手を当て高らかに吐き出してゆく。

 悲痛な絶叫を合図に、楽曲は「絶望のナルシス」へ。とても胸を締めつけながらも、孤高の美しさも覚える歌だ。メンバー一人一人が絶世の美の存在と化しながらも、孤独ゆえの絶望へ苛まれる心情を、揺れる感情のままに歌っていた。間奏では絶叫にも似た声で煽る場面も。この楽曲、切なさを抱きながらも、琴線を揺らす悲哀な歌メロが心を熱く揺さぶり続ける。だから、この世界へ気持ちが深く飲み込まれてゆく。

 この日のセットリストは、自分の気持ちと対峙する機会が増えたコロナ禍以降の人々の心境と重なる歌が多く並んでいた。自分の心と真正面から向き合い、心に涙するように、彼女たちは「MISS YOU」を歌っていた。みずからの傷ついた心としっかり向き合いながら、哀しみの中からでさえも僅かな光を感じようと、悲哀を持った歌声で、彼女たちは泣きそうな心の声に光を重ね合わせるように歌っていた。

次に披露したのが、平和への願いを込めた、戦争が与えた無慈悲な想いと哀しみに暮れる悲嘆な言葉を綴ったバラードナンバーの「大和」。彼女たちは、二度とこの哀しみを繰り返してはいけないと切に願う想いを込めながら、哀しみに浸る心模様を、亡くなった戦士の想いを受け継ぐように歌っていた。その歌声を、観客たちも心で抱きしめるように受け止めながら、彼女たちの歌声に心を浸らせていた。

先に胸に抱いた切なさを良い形で受け継ぐように、CHERRY GIRLS PROJECTは「uTITLEDn」を歌いだした。曲が進むごとに心に光や熱を覚えてゆくのも、彼女たち自身が痛い心模様を希望に変えてゆこうとしていたからだ。大切な人のことを心の底から信頼し、共に手を取り合い未来へ進もうとしてゆく。今の時代にとても必要で大切な想いを、彼女たちは感情揺れる想いのまま、ドラマチックな展開を描く楽曲に乗せ歌い躍っていた。

 弦楽とフィドルの音色が交錯しながら、会場にいる人たちを現実の世界から遠ざけ、壮大な荒野広がる古の世界へと連れだした。失くした大切な人へ、今は届かない想いを届けるように、涙を堪えた声で、5人は「Loveletter」を愛おしい大切な人へ向けて歌っていた。昨年以降、時代に翻弄され、いろんなものを失った人たちも多いだろう。そんな闇が剥きだした欠けた心を持っている人たちに、この歌は時に鎮魂歌のように。時に、想い寄り添う優しい声として、欠けた闇を塞ぐように響いていた。
 
 「ライブはけっして不要不急じゃない。わたしたちは、こんな状況下でも抗って生きていきます」。その言葉を受けて披露したのが、「幻日」だ。この楽曲を作詞した方自身が、コロナに罹り、生死を彷徨う重篤な状態から返ってきた人。そのときの心情を綴った歌でもあるように、絶望の中へ落ちようと,それでも生きる強い意志を示す歌は、この日の企画にぴったりの内容だ。彼女たち自身も、負の感情と寄り添いながら生きる人たちのように、闇の中から光を求めるように手を伸ばす歌はとても似合う表情だ。

 続く「神さま、お願い。」も、昨年の緊急事態宣言下の中で生まれた楽曲。まさに不要不急の外出を制限されていた中、それでも希望を失くさない想いを、彼女たちは歌に乗せて伝えてきた。何を持って不要不急というのか、人は心と心を支えあう関係を失くしてしまったら、それこそ人として崩壊してしまう。人の心の根源を歌うCHERRY GIRLS PROJECTだからこそ、こういう意義の深いライブに出演し、想いをメッセージしてゆくのはとても大切なことだし、彼女たちに似合う場だと言えようか。

 最後にCHERRY GIRLS PROJECTは、「僕たちの為に、あの鐘は鳴る」を熱唱。自分たちと同じ心に傷を持つ人たちへ向け、絶望の中からにいようとも、願い、信じていれば絶対に輝く日が訪れる。だから一緒に進もうよと歌いかけてきた。一人じゃない、同じ意志を持って支えあえる仲間がそこにいるなら、どんなにバカにされようと、不可能だと笑われようと乗り越えていける。その結果がどうであれ、自分を突き動かす力を心に芽生えさせるのが何よりも大切なこと。その勇気を「僕たちの為に、あの鐘は鳴る」が最後に心に注いでくれた。保証のない未来。それを嘆くのではなく、そこに光射す景色を描きたい。そのパートナーとなるCHERRY GIRLS PROJECTの歌を携えながら、自分なりの未来図に希望の光を当てようじゃないか。

ライブを終えてのコメント

真汐里緒

バンドのライブにはこれまでにも何度か出演させていただいていて、ハシグチカナデリヤさんとも何度かご一緒させていただいているので、今日のライブにもハシグチさん繋がりで何回か見てくださっている方もいたと思うんですが、そういう方も含め、普段アイドルを見ない方や、多分初見なんだろうなという方も、すごくノってくださっていたのが嬉しかったです! このライブのタイトルでもあるんですけど、やっぱり音楽は不要不急じゃないし、みんなが繋がる一つのツールだと思ったので、これからもどんどんその輪を広げていきたいです。

真志取みらい

今回のカナデリンピック2021は、タイトル通り、現状に抗うようなライブだと思いますが、出演者さんの中にもコロナで出られなくなっちゃった方もいて、現実にコロナが迫ってきているというのを感じながらやりました。でもそんな状況の中、たくさんの方が見に来てくださって、やっぱりエンターテインメントは必要されているんだなと再確認できたライブでした。

九瀬いむ

久しぶりに5人全員で限界突破したライブができたなと思いました! 9曲もやって苦しかったし、息が続かなくなりそうだったときもありましたが、その中でも大きい声を出して、隣にいる人のオーラとか熱気が伝わるような、全力のパフォーマンスがみんなでできたと思います。めっちゃくちゃ楽しかったです!

来瞳舞夢

今回セットリストが9曲と多かったんですけど、思っていたより大変ではなかったので、日々ライブを積み重ねてきた結果が出ていると思いました。靴の踵がぶち抜けたのにはびっくりしましたが(笑)。でもそういうトラブルも楽しめるようになってきているのが、日々ライブをやってきた成果なのかなと思っています。バンドの方々と一緒にライブをやってみて、やっぱりアイドルってMC弱いんだなぁっていうのに気づきました(笑)。これからはそういうところも強化していきたいです。改善点も見つかって良かったと思います。今日のライブは、可愛い系の曲は外して、かっこいい系のバキバキした曲や、ちょっとシリアスな聴かせる系の曲など、バリエーション豊富なセットリストにしたので、普段バンドの音楽を聴いている音楽好きな方も楽しんでいただけたかなと思うし、盛り上がりたいアイドルファンの方も楽しめたと思うし、チェリガ(CHERRY GIRLS PROJECT)らしいライブができたんじゃないかなと思います。

優希瞳

「カナデリンピック2021~ライブは不要不急じゃねぇんだよ!バーカ!アーホ!の祭~」っていうタイトルを考えちゃうカナデリアさんかっこいいな、さすがだなと思いました。私たちも、ライブに対する熱量を感じながらパフォーマンスができて、すごく幸せでした。不要不急じゃないっていうことを示すライブに参加できたことが、個人的にはすごく嬉しかったです。今日のライブは、過去一いろいろな感情を背負って戦ったライブだったんですけど、すごい楽しかったです。ありがとうございました!

PHOTO: 高橋圭司
TEXT:長澤智典
コメントテキスト:南明歩

CHERRY GIRLS PROJECT
https://cherrygirlsproject.com/
https://twitter.com/cgp_db


セットリスト

「モンスター」
「絶望のナルシス」
「mMISS YOU」
「大和」
「uTITLEDn」
「Loveletter」
「幻日」
「神さま、お願い。」
「僕たちの為に、あの鐘は鳴る」